一途に想う

昔飼っていた犬がいた。
雑種のメス犬だったけれど、誰に似たんだかわがままな犬だった。
食べ物の好き嫌いがはっきりしていたのはもちろん、オス犬の好みもはっきりしていた。

好みというより、ある1匹のオス犬に惚れていた。
それは、一軒の家の玄関先につながれていた、茶色のたぶんしば犬で、「ラッキー」という名の犬だった。
私からしたら、その一軒家もそんなにキレイな感じではなかったし、犬小屋も立派なものではなかったし、どうしてよりによって、ゴールデンレトリバーやシェパードのようなかっこいい犬ではなく、しば犬なんだろうと思っていた。
でも、散歩に行くときになると、必ずラッキーがいる方向へとひっぱっていくのだ。
二匹の犬は、両思いのようで会うとお互いしっぽを振り、臭いを確かめ合っていた。
しかもその思いの深さを知ることになった脱走事件があった。
室内で飼っていた犬だったが、夏や掃除をしていると家の窓を開ける。
そうすると、それを目ざとく見つけ、脱走をするのだ。
ラッキーと出会う前は、家の前にある他人の畑をぐるぐる駆け回り、捕まえるのに家族が犬の好物を持って追いかけたり、名前を呼んだりと大騒ぎになった。
しかし、ある時から脱走しても畑をぐるぐる回らず、違うところへ一目散へ駆け出すのだ。
それは、ラッキーのところだった。
家族は、脱走を見つけると、犬が走っていった方向へ駆け出す。
もちろんその足に追いつけるわけはないのだか、ゴールはわかっていた。
息を切らしてラッキーの家につくとやはり家の犬がラッキーとじゃれあっている。
それを見ると怒りよりも、微笑みがでてしまっていた。
家に犬はもてないわけではなかった。
他の犬からのアプローチもあったが、それらにはまったく目もくれず死ぬまでラッキー一筋だった。
生きている間は夫婦にしてあげることはできなかったので、今天国で思う存分一緒にいてくれたらと願う。

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