飼い犬の死

一番つらい別れは、死だと思う。
私は幸いにして、今のところ身内や友達、親しい人の死に立ち会ったことがなく、つらさは想像でしかない。
でも、ペットの死なら直面したことがある。

ペットは家族だという考えの人もいるし、いやいや、人の死と動物の死を一緒にされては困るという考えの人もいるだろう。

でも、確かにつらく、二度と会うことができない別れである。

その犬は、父親が拾ってきた雑種犬で、まだ生後半年くらいのメスの犬だった。
子供は大喜びだったけれど、母親は世話がかかるものが一つ増えたと嫌がっていた。
古い考えの両親は、「犬は外、犬の餌は残飯」という信念のもと実行したが、外に出すと鳴く、白飯に味噌汁をかけたものは食べないという贅沢っぷりで困っていた。

次第に家の中で飼うようになり、ドックフードや茹でたキャベツと鶏肉などを与え、そのわがままで人間を振り回すさまが家族から愛され、家族の中のアイドルになっていった。
私が小学校から大学生になるまで飼っており、その頃の家族との思い出の中にかなりのスペースで居座っている。

飼い犬の死は突然だった。
散歩の途中になにか変なものを食べたのだろう、体調を崩し、3日くらいで亡くなってしまった。
家族で泣き、埋葬し、お墓を作った。

よく、その悲しさを埋めるために新たなペットを飼う人がいるようだか、10年くらいたった今でも我が家は、あんな悲しみはコリゴリということで、何も飼ってない。
我が家の唯一無二のペットが教えてくれたことはたくさんある。

でも、突然やってくる別れに対し、悲しみ以外の感情はないし、備えることもできない。
ただただ受け入れるしかない。
唯一の救いは、自分が死んだとき、三途の川の向こうで待ってくれている魂がある、ということだけだろうか。

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